研究内容 about

細菌研究グループ

人獣共通感染症の発生動向調査

人獣共通感染症の発生動向調査

アジア・アフリカの国々でゾウ、サル、シカなどの野生動物やブタ、ウシ、ニワトリなどの家畜およびヒトから結核菌群菌、非結核性抗酸菌、大腸菌、サルモネラ菌およびレプトスピラを分離して、その遺伝子を解析し、細菌がどの様な人獣共通感染症を起こしているか調べています。これまでの研究で、ザンビアにおいて野生動物と家畜の間に結核菌群菌の一種のウシ型結核菌が蔓延しており、これがヒトにもかかっている事をつきとめました。ネパールでは、象がヒト型結核菌で病気になっている事を見つけました。また、ネパールのシカとブルーブル、バングラデシュのサルとウシがMycobacterium orygisという新種の結核菌群菌で病気になっている事も見つけました。


薬剤耐性獲得機構の研究

薬剤耐性獲得機構の研究

 世界各地で薬が効かない「薬剤耐性菌」が報告されています。中でも多剤耐性結核菌は、治療のの難しさから非常に大きな社会問題となっています。薬剤耐性菌では、菌体中の薬が作用する部分の変化、薬の分解および修飾による不活化ならびに小さな化学物質を菌体外に出す能力の上昇が見られています。これらの形質は、突然変異ならびに可動性因子の授受よって付与されます。当部門では、アジアおよびアフリカの国々で家畜およびヒトから薬が効かない結核菌、非結核性抗酸菌、サルモネラ菌、大腸菌ならびにキャンピロバクターを分離し、その遺伝子を解析する事で、これらの細菌がどのようにして薬剤耐性を獲得しているかを調べています。これまでの研究で、以下のことがわかって来ました。
 1)タイ、ミャンマー、バングラデシュならびにネパールにおける結核菌の多剤耐性獲得機構
 2)結核菌、らい菌、サルモネラ菌ならびにキャンピロバクターのフルオロキノロン耐性にかかわるアミノ   酸置換
 3)タイにおけるエビおよびブタ由来大腸菌の多剤耐性獲得機構

 これら研究により得られた情報は、感受性菌、耐性菌の両方に効果がある新らしい薬のデザインおよび素早く薬が効かない菌を見つける方法の開発に活用されます。


診断法の開発

薬剤耐性獲得機構の研究

人獣共通感染症にかかったかどうかを診断する事、また、既存の薬が効くかどうかを調べる事は治療を的確なものにします。当部門では、発生動向調査および薬剤耐性獲得機構の研究で集めた菌株から得られる遺伝子情報を元にして安価、簡便かつ迅速な細菌感染症の診断法、薬剤耐性試験法ならびに遺伝子型別法を開発しています。さらに、出来上がった方法を発展途上国に技術提供し、その国の感染症対策に貢献しています。

当部門の成果がYouTubeに「アフリカの感染症と闘う 100円検査キット開発」としてアップされました。


バイオロジクス研究グループ

糖蛋白質高発現系を用いた生物製剤の開発

薬剤耐性獲得機構の研究

遺伝子、蛋白質、細胞や組織など生体由来の物質、あるいは生物の機能を利用して製造した製剤のことをバイオロジクス(生物製剤)といいます。2012年の世界の医薬品売上の10位までの中に7つのバイオロジクスが含まれていることから、その重要性がわかります。当部門ではバイオロジクスのうちの特に抗体や可溶性受容体のような糖蛋白質に焦点を絞り、動物細胞を宿主とした高発現ベクターを用いた目的蛋白質の大量発現系を構築しています。高発現ベクター系の開発では、遺伝子転写レベルが染色体上の位置により著しく異なる事に着目して、高転写部位に目的蛋白質をコードする遺伝子が挿入された細胞を高い率で得る事が出来るベクターの開発に成功しました。現在はこのベクターを使って製薬企業と共同で抗体製剤を開発しています。